著者について
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。
ブランドと外見が至上主義される価値観に疑問を持ち、「幸福、自由、欲、富、快楽のゴールはどこにあるのか。」をテーマに取材活動をおこなう。
担当する特集で、お金、恋愛、結婚、出産、教育などを深掘りし続けている。
著書に「貧困女子のリアル」「不倫女子のリアル」(ともに小学館新書)がある。
多様な“沼”に共通する「孤独」と「承認欲求」
本書に登場する人たちがはまっている沼は、見た目にはバラバラです。
しかし、その根底には「寂しさ」や「誰かに認められたい」という共通の感情があります。ホストにハマった女性も、推し活に人生を費やす人も、自分の存在価値を“何か”で証明したいという欲望に突き動かされています。
沢木氏のインタビューは、深い共感と観察力に基づいており、読んでいる側の心にもじんわりと響きます。
なぜ人は“ハマる”のか?依存のメカニズムを冷静に描写
『沼にはまる人々』の大きな魅力は、エンタメ性だけでなく、依存のメカニズムを冷静に描いている点です。
たとえば、整形にハマった女性の話では、「外見を変えるたびに自己肯定感が上がるものの、それが長く続かない」という心の揺れが描かれます。
依存とは「満たされない心を、一時的に埋める行為」だという本質が浮き彫りになります。
「これは他人事ではない」 自分自身の心にも潜む“沼”
読んでいて興味深いのは、「自分には関係ない」と思っていた“沼”が、実はすぐ隣にあるかもしれないと気づくことです。
誰にでも「何か違っているかもしれないが、自分の行動を正当化したい」と思う瞬間があります。
たとえそれが取るに足らない小さな買い物依存であっても、その奥にある感情は、本書に出てくる登場人物と全く同じかもしれないと思わされました。
読後に残る「それでも人は前に進む力がある」という希望
本書は決して「依存はダメ」と断罪するわけではありません。
むしろ、「人は何度でもやり直せる」「抜け出すこともできる」と希望をにじませます。
著者・沢木氏のまなざしはあたたかく、登場人物の多くも「(本意かどうかは置いといて)今は沼から脱出した。」と語ります。
「沼と上手につきあう方法」についても具体的に書かれており、読後、心のどこかに小さな灯がともるような感覚が残るのも、本書の大きな魅力です。
まとめ:『沼にはまる人々』は、現代を生きるすべての人に刺さる一冊
『沼にはまる人々』は、現代社会における“心の居場所”のなさや、人間の弱さと回復力を丁寧に描いた一冊です。
「沼」とは誰にでも起こりうる心の落とし穴であり、同時にそこから這い上がるための気づきのきっかけでもある。
多種多様な「沼」にはまることは、自分自身を知り、受け入れること。自分の内面を見つめ直す貴重な鏡になることを本書から学びました!

危うくも至福の世界。。
沼に飲み込まれるのではなく、
上手につきあいたいですね!
コメント